信託を作成するには二つの方法が有ります。一つは遺言信託(Testamentary Trust)といい、遺言の中に組み入れる方法で、信託は本人の死後でなければ有効になりません。もう一つの方法は、生存中に生存者信託(Living Trust)を設定し、財産を信託に入れる方法です。生存者信託は、通常解除することが可能です。つまり夫婦二人とも生存中に信託財産の一部、あるいは全部を引き出すことが出来るという意味です。遺言信託(遺言に組み入れた信託)と生存者信託の一番の大きな違いは、生存者信託では検認手続き費用の支出を避けることができますが、遺言信託ではそれができないことです。

財産設計信託を利用すれば、多額の相続税を節約する事が出来ます。この種の信託は通常A-B信託と呼ばれ、遺言信託でも生存者信託でも作れます。たとえば、夫婦二人で$10,900,000ドルの財産を所有している夫婦が、信託を作成したとしましょう。この例では、夫婦は委託者であり、信託管理人であり、受益者でもあるとします。二人が生きている間は、信託は解除可能、つまり取り消すことが出来ます。ところが、夫が死亡した場合、信託は解除不可能、つまり取り消すことは出来なくなります。信託Aは共有財産のうちの妻が所有する半分です。妻は信託Aから生じる収入の全てを得、またその基本財産(元本)を引き出すことも出来ます。信託B(共有財産のうち、夫の半分)については、通常、妻はそこから生じる収入を得ることは出来ますが、基本財産を引き出す権利は制限されています。妻は自分の死後信託Aの財産を相続する者を指定することも含めて基本的には信託Aのすべての財産を管理することができます。しかし、信託Bについては、夫が生存中に決定した信託に関する指示に従って管理されます。通常、妻の死後信託Bの財産は子供達に残すと規定されます。

なぜこの様に信託を作成するのでしょうか?それは税金のためです。夫婦が上記の様に信託を作成した場合、生き残った妻が亡くなった時点で信託Bに対して税金がかからないのです。(共有財産に関する記述をご覧下さい。)信託がなければ、夫が亡くなった時に夫の全財産は妻の物になり、妻の財産は$10,900,000ドルになります。特別な相続税に関する規定(婚姻控除)により、夫の死亡時に相続税は発生しません。しかしながら、妻の死亡時には$5,450,000ドル(2016年)を超える財産については全額、相続税がかかります。この例ですと、$5,450,000ドルが相続税の対象となってしまうわけです。これに対する税金はおよそ$2,000,000ドルとなります。これはかなりの金額です。

但し、A-B信託を作成しておけば税金を支払わずに済みます。つまり約$2,000,000ドルの節約になるわけです。また、生存信託を設定すれば、約$300,000ドル以上の検認手続費用を節約することができます。つまり、財産設計信託を設定することは夫婦にとって$2,300,000ドルを節約する可能性を意味します。国税庁(IRS)への税金及び検認手続き費用として支払われる$2,300,000ドルを子供達に残す事が出来るのです。

但し、信託には欠点もあります。夫婦の一方の死亡した後は、信託について別途税務申告書を提出する必要があります。また、会計士、弁護士費用、管理費用といった信託の維持に対する費用がかかります。しかし、多額の税金を節約できる利点を考えれば、信託の総合的な利点は些細な欠点を大きく上回るものです。